
衛生管理は基礎中の基礎!調理師として知識を学ぶ以上に重要なこと
調理師免許を取得するために学ぶ座学には、「公衆衛生学・食品学・栄養学・食品衛生学・調理理論・食文化概論」の6科目があり、調理師として社会で活躍するためには、どれも欠かせない知識であることは言うまでもありません。食を取扱うプロとして活躍するということは、言い換えれば
人に料理を提供することを生業とする
ということでもありますので、当然のことながらその料理が美味しい・美味しくない以前に、
その料理が安全であるかどうか?
ということが大前提となり、その安全性を高めるのが「公衆衛生学」であったり「食品衛生学」といった衛生学なのです。
もう少し分かりやすく言うと、身近な公共交通機関であるタクシーやバスを運転するには「二種免許」という運転免許が必要となりますが、一種免許(俗に言う普通免許)で学ぶ座学が道路交通法であるのに対して、旅客輸送のプロである二種免許は、道路交通法以外にも「旅客自動車運送事業法」という法規を学ぶ必要があります。
つまり二種免許は、有償で旅客を運送するための知識や技術を有したもの証であり、有償で人に何かを提供するという観点では料理人も同じです。すなわち、これら免許は
高い安全意識を持ち合わせているという証
でもあるので、当然のことながら調理師免許のなかでも衛生学は、特に高い知識と意識が求められるジャンルと言っても過言ではありません。
とはいえ、実際には全国的に飲食店による食中毒が頻発しているのも事実。 「美味しい・美味しくない」という味覚は個人差がありますので客足の影響度は限定的かもしれませんが、たちまち食中毒を出してしまえば一気に信頼を失い、信頼を取り戻すのは非常に困難になるだけでなく、当然のことながら賠償責任も負うこととなります。
ここで重要なことは、公衆衛生や食品衛生に対する高い知識を持つことはもちろん
衛生学に対する高い意識を学生のうちから養う
ということが大切で、調理師専門学校が相対的に厳しいと言われる背景には、こうした「人の人生に関わる可能性があるサービス」を目指す学生に高い安全意識を持ってもらう目的もあるのです。今回の記事では、調理師が携わる衛生学に対する重要性の再確認と、そうした背景から
厳しいと言われる調理師専門学校の校則の意義
について詳しく掘り下げていきます。
この機会に衛生学の重要性をより深く理解し、学生のうちから衛生学に対する意識を高めて、食の安全性のプロを自称できるレベルに成長していただきたいと思います。
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調理実務に影響を及ぼす生活の乱れとルール・校則の重要性
「食の安全を提供する」調理師において、衛生学の重要性は先に述べたとおりですが、食品衛生学などの座学はもちろん、
自分自身の衛生観念を高めることも重要な要素
であることは言うまでもありません。
例えば、メディアなどで頻繁に報じられる食中毒の原因となる「ノロウィルス」。これは感染者の便や嘔吐物、それらで汚染された調理器具や食品を摂取することによる経口感染が主になりますが、その原因の多くは
体調不良者による調理や不十分な手洗い
※出典:厚生労働省「食中毒の原因(細菌以外)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/03.html
とされていることから、調理者個人の衛生観念に対する意識の低さが露呈した形。
意識を高めるということは日常生活にも関係してくることなので、例えば職場での指導があったとしても、生まれながらの習慣はなかなか変えられないもの。衛生観念を高めるためには、基本的な衛生習慣を身につけ、手洗いやうがい、咳やくしゃみといったエチケットなどから見直す必要があります。そして一番重要なのが
これらの衛生習慣がなぜ大切なのかを理解すること
で、調理師専門学校の校則が相対的に厳しめになっていることは、
無意識の衛生習慣を身に付けさせるため
でもあるのです。極端な例を挙げると、一人暮らしで生活が乱れ、自分の部屋も散らかっていてゴミだらけ・・・といった人が、お客様に料理を提供することを想像すれば分かりやすいですし、爪が伸びてて不衛生に感じる人がサラダの盛り付けをしている・・・なんて、食中毒以前に飲食業失格レベルでしょう。つまり、
衛生観念は生活習慣と密接にリンクしている
と言っても過言ではありませんので、社会に出る前にそうした衛生意識を養ううえでも調理師専門学校の校則の厳しさは非常に意義のあるものなのです。調理師専門学校に通う世代で言うと、オシャレも楽しみたい、プライベートも充実させたい、という年代かもしれませんが、例えば、
・オシャレアイテムのピアスなどは小さくて食品に混入しやすい
・ブリーチなどの髪染めも傷んだ髪が切れて食品に混入しやすい
・伸びた爪やネイルアート、ポリッシュも食品に混入しやすい
もちろん実習がない日はOKなところもありますが、生活習慣として衛生観念を高めるのであれば、極力こうしたオシャレもある程度は控えた方が良いかもしれません。このように、衛生観念を高めるためには、無意識のなかでの意識改革が必要となりますので、
その意識改革を手助けしてくれるのが学校の校則
であるということを理解するようにしましょう。
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食品衛生の重要性と校則はお客様の立場で考えよう
上記でも軽く触れましたが、調理師専門学校を卒業するということは、将来的に何かしら飲食関連の仕事を目指している、携わる予定という学生が多いので、必然的に衛生に対する意識は高められていくことになりますが、その意識は普段の日常生活から養われるものなので
・帰宅時には手洗い・うがいを欠かさず行っている ・自分の部屋は常に整理整頓・清掃されている ・毎日入浴して自分自身の清潔さを保っている ・いつも綺麗に選択された衣服を身に付けている
といったことが、無意識に行えることが求められます。
調理師専門学校によっては、実習前に爪や頭髪、コックコートなどのチェックを行い、ひとつでも清潔さが欠ければ、実習を受けることができないような学校もあります。それだけ、衛生面という観点が調理師にとって重要な要素であることを意識づけなければならないのです。
例えば、皆さんがお客様として高級ホテルのレストランに行ったと仮定します。 注文した料理に毛髪が混入していた、爪の破片が混入していた、となったら、不快な思いをするだけでなく、「高級ホテルのレストランのくせに」という憤りを覚えることでしょう。それだけならまだしも、一瞬の気の緩みによって食中毒などを出してしまえば営業停止となり
消費者だけでなく同じ従業員にも影響が出る
わけですので、衛生観念の欠落が与える影響は計り知れないのです。
つまり、なぜ衛生観念を高める必要があるのか?、衛生習慣がなぜ大切なのか?を理解するということは、単に衛生学を学び・理解するだけではなく、
自分自身や他の従業員、勤務先やお客様の幸福
につながることになり、それを養う土台となるのが調理師専門学校の役割でもあるのです。 インターネットなどを調べれば、ノロウイルスを原因とした食中毒を出したホテルレストランなどは数多く確認できますが、お店やお客様の影響はもちろんのこと、
自分自身の料理人としてのモチベーション低下
にもつながってしまう可能性もありますので、自分自身の道を閉ざしてしまわぬよう、学生の時から校則の厳しさの重要性を理解し、自身の衛生観念を高め、社会に出て調理人として活躍する際には「学生時代の校則の厳しさ」を常に思い出せるようにしておきましょう。
何ごとも初心忘れるべからずです。
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