ラーメン・寿司・焼き鳥~今や日本の食文化が海外で大バズリ?
近年、外国人観光客が増加傾向にあることを背景に、日本独自の食文化が注目されています。もちろん、こうしたムーブメントは以前からありましたが、円安などを背景に「より日本が身近になってきた」ことで、日本の景勝地を巡るといった定番の観光から、
グルメツーリズム(食体験)への関心が高まっており
日本国民が日常生活のなかで行くような定食屋や、ラーメン、天ぷらといった
「日常的な食文化」を体験することに価値を感じる
ようになってきました。
もちろん、引続き「寿司」は人気メニューのひとつではありますが、それ以外にも「焼き鳥」「唐揚げ」といった居酒屋メニューも外国人観光客には大人気で、日本ならではの食文化を母国に持ち帰ろうとする動きも出ているくらいです。
そんな日本ならではの食文化のなかで、最もポピュラーなのが「ラーメン」。日本のラーメン屋自体は、すでに海外諸国にある程度進出はしておりますが、やはり
地域ごとに味が異なる多彩なラーメンが食べたい
といったニーズは高いため、その日本の食文化を広めたいという想いから「ラーメン屋で独立して海外に出店したい」と思う人も少なくありません。もちろん、ラーメン屋に限った話ではありませんが、調理師専門学校在籍中も「卒業後は海外に渡って独立したい」と考える生徒さんは決して珍しいわけではなく、
この日本食ブームにあやかって海外で成功したい!!
というサクセスストーリーを描くことも可能です。
もちろん言語の壁であったり、各国で異なる飲食店営業の許可や衛生基準などはしっかりと把握しておく必要はありますが、日本人気を背景に日本に来れない潜在顧客が多いこと、本場の味を体験したいというニーズが多いことなどを背景に、人口の多い都市部でもチャンスが広がっているのは事実。海外で成功したいという想いはもちろんですが、
文化体験としての価値を世界に提供する
という観点では、日本独自の食文化を武器に海外で独立開業するという選択肢は、今後調理師専門学校の卒業後の進路のひとつとして確立される可能性も十分あるのです。
上記では、日本のB級グルメであるラーメンをピックアップしておりますが、海外進出&独立という点では、ラーメン屋以外にも居酒屋、うどん屋、天ぷら屋など様々な業種が考えられます。ただ、日本食が人気だからと言って、それをそのまま海外に持ち込めば大ヒット・・・などという単純なものではありませんので、当然
海外出店・独立を安易に考えるべきではない!
ということを踏まえ、この記事では調理師専門学校の卒業から、独立・海外出店までのサクセスストーリがイメージできるようなプロセスをご紹介していきます。海外出店に必要な資格や手続きについては次回記事で詳しく紹介しますが、まず大切なのは
基礎スキルと独立に対する情熱
これがないと、独立はおろか日本国内での就職すらままならないことは言うまでもありません。それが独立を前提とした海外修行ともなりますと、一段とハードルが高くなり、より目的達成までの強い想いが必要となってきます。こうした点を踏まえ、海外での独立開業までのプロセスをしっかりと把握しておきましょう。
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卒業後に即独立開業は可能?!海外での日本食系店舗の出店プロセス
気になる海外出店へのプロセスですが、多くの生徒さんはその情熱や熱量的にも
卒業後すぐに海外で独立開業したい!
と思うところではありますが、当然そのフローは現実的ではありません。
仮に、在学中にアルバイトなどでその業種に携わっていて、技術やスキル、言語などに自信があったとしても、卒業後すぐの海外出店は無謀とも言えるでしょう。まずは、すでに出店している業態の近い店舗に就職して、
その土地ならではの文化や商慣習を理解する
ことから始めるのが一般的です。
将来的な独立開業を視野に、現地の専門家のサポートを受けながら国ごとの法律や規制を把握することはもちろんですが、現地で調達できる食材を把握したり、
現地の人の味覚に合わせる柔軟性も非常に重要
単に日本のレシピを流用するだけでは、現地で受け入れられない可能性が高く、その辺のリサーチや準備も必要になってきます。海外出店までに必要なプロセスは、出店先のリサーチからメニュー決定、店舗デザインやコンセプト決定、当然資金調達も必要となりますし、実際に店舗運営のノウハウやスタッフ教育など、業務は多岐に渡ります。
この記事では、必要なプロセスを明確にすべて解説できる訳ではありませんが、開業への熱量が高いほど
調理以外の重要なプロセスを見落としがち
という傾向にありますので、言うまでもありませんが、現地の似たような店舗で修行をしながら、店舗運営のノウハウを自分のものにしていくのが定番と言えるでしょう。「いち早く自分の店を持ちたい!」という熱い気持ちは十分理解できますが、海外出店ともなりますと、身近な仲間が少なかったり、撤退も容易ではなかったりしますので、現地での修行経験を元に
できる限り失敗リスクを抑える
という観点を持つことがとても重要です。
また、修行をするための店舗選びも同様ですが、日本なら「肌に合わないからこのお店辞めよう」とすぐに判断できるかもしれませんが、海外での生活費のこともありますので、職を転々とするわけにもいきませんし、日本食レストラン(居酒屋やラーメン屋なども含め)という選択肢そのものが決して多い訳ではありません。また、こうした
目に見えない心理的プレッシャーも重くのしかかってきます
ので、日本と同じようにアルバイト探しも軽い気持ちで行っていると、修行先すら見つからない、雇ってもらえないということも十分に考えられます。海外において日本食の人気が高いからといっても、決して「引手あまたではない」という自覚を持ち、決死の覚悟で臨むための準備をしっかりと行うことが大切です。まずは
1,出店しようと思う周辺地域のリサーチ
2,現地人の味覚や食文化のリサーチ
3,周辺地域での同業種店への修行・就職
4,法律や規制、商慣習のリサーチ
などといった点をしっかりと事前に調査しておくことを忘れないようにしましょう。
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空前絶後の日本食ブームでも法規制や食文化の違いを理解しよう!
前段でお伝えした内容を精査すると、すでに「独立開業は無理じゃない?!」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、例えば米国においては、独立系飲食店の初年度倒産率は約17%程度と、日本国内では3割程度と言われるなかで、米国では思いのほか低いかもしれません。
出典:The Real Restaurant Failure Rate Is Lower Than You Think (2025 Data)
https://www.owner.com/blog/restaurant-failure-rate
もちろん、これは米国に限った話で、フランスやドイツといったヨーロッパの主要国には当てはまりませんが、上記レポートにおける倒産原因の大きな要因の一つに挙げられているのが
メニューと市場の適合性の低さ
となりますので、やはり出店先の国を問わず、現地の食文化や味の嗜好、商慣習の理解などは最も重要な出店プロセスに挙げられる項目となります。
また、いくら準備万端で出店に漕ぎつけたとしても、予想しえないトラブルに見舞われるのが海外出店の常であり、例えば、お店が流行れば同業種から嫌がらせを受けたり、入店するテナントからいきなり退去を命じられたりと、日本では考えもつかないようなトラブルも起こりうるのが海外です。日本の物差しで海外を測ること自体がナンセンスではありますが、
専門学校卒直後では経験不足は否めない
ので、この辺をどのように解決するかも重要なポイント。
熱い想いや勢いだけではどうにもならないことが起こりうることも想定し、現地のことに詳しい専門家やサポーターを味方につけることも忘れないようにしましょう。ただし、このあたりの懸念点がしっかりと対応できれば、空前の日本食ブームを背景に、海外でも大きな成功を収める可能性は十分にあります。海外出店の失敗の多くは
現地文化の理解不足と人材管理、資金管理の不備
である程度まとめられますので、その辺に不備がないよう緻密に計画を立て、計画の進行や進捗もしっかりと把握しながら、焦らずに事を進めることが肝要です。
現在、アジア圏ではタイ・シンガポール・香港、欧米ではニューヨークやロサンゼルス、ロンドン、ドバイなどの中東圏でも日本の食文化の人気が高まっています。日本食に対するヘルシーなイメージだけでなく、その創作性や日本風アレンジが外国人を惹きつけ、最近ではカツカレーやとんかつ、オムライスといった日本ならではのワンプレート飯も大人気で、
日本の洋食文化が海外に逆輸出されている状況
日本の一般的な家庭に並ぶような日常的な食文化が、海外では大きなビジネスチャンスになっているという状況を踏まえると、
かなり大きな夢のある選択肢
であることは説明の余地がありません。
ただし、独立開業までのプロセスは決して容易ではなく「徹底したリサーチが命運を分ける」と言っても過言ではない、ということをしっかりと自覚しておきましょう。
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